海底に眠る旧日本海軍給油艦・あまつ丸を訪ねる~パラオダイビング旅行記4~

さてパラオのダイビング2日目。一日目の打ち合わせ通り、早起きして早朝から旧日本海軍の給油艦、あまつ丸を訪ねるダイビングです。どうやら今日は快晴。朝の6時に船着き場にやって来ると、ちょうど東の空から太陽が上がってきました。

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今日も暑い日になりそうです!

海の記録に移る前にあまつ丸について少し紹介します。あまつ丸はパラオのマラカル島西に沈んでいます。太平洋戦争時に日本海軍の給油艦として稼動していた船で、私たちが利用したダイビングショップ”Daydream”さんのサイトによると、全長:160.50m、全幅:20m、総トン数:10,567㌧(ただしサイズについては異説あり)とのことで、ミクロネシアのダイビングポイントになっている沈船では最大の船といわれています。あまつ丸は1940年に三菱長崎造船所で竣工し、当初民間船だったものを海軍が徴用し、南方の油送に携わります。そしてパラオ停泊中に1944年3月30~31日のパラオ大空襲時に爆弾の直撃を受け撃沈されました。この際、10名の方が犠牲になったそうです。
(※この後、あまつ丸に関する情報や写真などが出て来ますが、私は太平洋戦争戦史や船の構造については素人なので、記述内容にミス等があると思いますので、その点ご承知ください。)

マラカル島の桟橋を出て、船は西へ。ポイントは港から10~15分くらいで着くくらいのようです。

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船がマラカル島の港を出てしばらく行くと、地元の漁船か何かの競技の練習をしているのかよくわからない船がいました。独特な構造ですし、舳先には警官のような制服を着た人が3人くらい乗っているし、しかし船の回りには小型のカヤックが沢山浮かんでいましたし。。。なんだかよく分からないですが強烈にパラオっぽい船。こちらの船は減速し、パラオ人船長が向こうのパラオ人たちとパラオ語で何かのやりとりしていました。

再度、船を走らせ停船したところは多分この辺り。

いかにもな南の島っぽいジャングルが海ギリギリまで迫っている、波は穏かそうな内湾です。海上を撮るとこんな具合。

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海の上は穏やかな海そのもの。この下わずか水深20mに旧日本海軍の船が眠っているようには思えない。海上から海に目を凝らしますが、あまつ丸は全く見えません。あまつ丸自体は水深3~40mのところに沈んでおり、ここは内湾で濁りが強そうな場所ですし海上からは厳しいか。

 

用意してタンクを背負って海に入りますが、海面付近からはやっぱりあまつ丸は見えません。あまつ丸どころかなにか目標になりそうな岩礁や海底も見えないぞ。。。濁りも相当強い。インストラクターさんに付いて潜行。特にサンゴの根なども見えないので魚もおらず、ダイバー以外は全て青の世界。本当にこの先に船が沈んでいるのかな、、、と思います。

 

と思ったら、15~20m先にぼんやりと構造物が見えてきて目が醒めます。

 

おおー、船だ・・・。濁りが強い海の中から突如目の前にあまつ丸が現れたので、圧倒されて声が出ません。

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我々がたどり着いのはどうやら船の中央部辺り。水深が深いのと透明度も低いためかなり暗い海です。なおあまつ丸は全長100m以上ある船ですから当然全貌は見えません。

まずは開いている穴から船の内部に入ってみます。

 

船の表面は泥が堆積しており、内部も同じ状況。うっかり泥を巻き上げると視界が失われるので注意してダイビングです。

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内部にはまだいろいろな機械が残されていました。70年間海の中にあってもそれなりに形は残っているものです。

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壁際には男性用小便器が。70年の歳月の間にいろんな付着生物に覆われていますが、こういった人間の生理活動の遺構を見ると70年前の出来事に生身の人間が携わって、実際に起きたことだと実感させられます。

 

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こちらは由緒正しき日本のトラディショナルな形をした大便用便器。まさしく日本の船です。日本人以外ダイバーはこれが何か分かるのでしょうか。

 

船内部から海上方向を見上げると太いパイプがたくさん見えます。
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あまつ丸は給油艦ですので、このパイプ状のものは油を流す配管だったのかもしれないとのこと。その配管の上を覆うようにテーブル状サンゴが枝を拡げていました。

船の内部の雰囲気が伝わればと思い、撮影した動画を紹介します。
(カメラを振りまわしすぎて慌しい動画になってしまいましたので再生速度が1/2になるように調整してあります。)

70年前ここで大きな船が沈み、日本人もこの船で亡くなっています。もちろんあまつ丸だけではなく、パラオ全体では多くの船か沈み、飛行機も落ち、それらが直接海の生き物を傷つけたでしょうし、それらから漏れた油や爆薬などが海に流れ出てさらに多くの海の生き物が死んでいったことでしょう。

70 年後の今、パラオは一つの国として独立し、多くの日本人、アメリカ人やそのほかの国の人がパラオにやってきて、平和なパラオの海域で一緒にレジャーダイビングを行い、70年前に沈んだ船は生物に覆いつくされて、それがさらに多くの生物の住みかとなり、ダイビングポイントになっています。このあまつ丸を見ていると歴史や自然の営み、平和に想いを巡らし、いろいろなことを考えさせられます。

やっぱりここに来てよかったな、、、、と思います。

 

さて、船の内部を出て船尾の方へ。船尾は大きな舵が残されており、あまつ丸が撃沈することになった爆弾の直撃箇所が残っているとのことです。

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付着生物に覆われた船体。

1944年3月末から登る人もいない階段。1944年3月のその日は慌しかったのでしょうね。
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船べりの柵。傾いて沈んでいることがわかります。

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上部の柵越しに水面を望む。海上には力強い太陽が昇ってきたようです。
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船の内部に向かって垂直に降りるハシゴがありました。
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内部は真っ暗で、底も見えない。。。さすがに中には入りません。水深はすでに20mを越えています。

さらに船尾の方に行くと、船の構造物がひしゃげて曲がってしまっている区域に。
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ここが爆弾が直撃したと思われる箇所。ここも生物で覆われているけど、70年経っても爆撃時に船が受けた凄まじい衝撃がわかります。

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同じ箇所でダイバーを入れて撮影してみました。スケールが伝わるかと思いきや、意外に分かりにくかった。。

ここらでタイムアップ。いろいろじっくり観察しすぎたせいで、船尾の舵までたどり着けずでした。少し深度を上げ、あまつ丸を見下ろすような形で船首のほうへ戻ります。
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甲板の鉄骨の上には卓状サンゴが生え沢山の魚や生物の住みかになっています。今のあまつ丸は生物のゆりかごです。

甲板の上から海上に腕を伸ばすようなクレーンか何かのアーム。
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このアームを過ぎた辺りから海面にむけて浮上。

海上は海中に向かう前と同じく平和そのものですが、頭のなかではいろいろ考えさせられる体験でした。このダイビングの前と後ではパラオの海に対する見方が変わったと言えるくらい衝撃的なダイビング。

船に上がると、船は一度ダイビングショップに戻るのですが、、、。さっきまで見た沈船のシーンや想像や想いが整理できないまま、なんとなくぼんやりと船に揺られてい ました。陸のダイビングショップに戻ってくると、そこには現代社会が待っていて、ショップに用意いただいた朝ごはんを頂き、コーヒーでも飲んでいると心も落ち着いてきて、通常のダイビングモードに。ご飯を食べたら今度は生物が豊かなパラオの海に向けて再度、出発です!

 

(追記)
あまつ丸ポイントはレジャーダイビングで潜るには深めな海になるので、潜水時間は短めでした。このダイビングのログを見返すと、平均水深19.3m、最大水深27.8mとなっております。私たちのパラオ滞在中のダイビングのうち、あまつ丸ポイントでは酸素濃度が高いナイトロックスを使ったダイビングになりました。

ここに掲載した写真には白い点やら線やらがたくさん写っていますが、海中の浮遊物やダイバーが巻き上げた海底の堆積物が水中ライトに当たったりして写っているものです。沈船じゃなくても濁った海の中でライトやフラッシュを使って写真を撮るとよく起こる現象です。しかし、水深が深く、濁りが強いのでなかなか鮮明な写真が撮りにくい。水中ライトで照らしながら撮っていますがシャッター速度も1/30や1/20など手振れ必至のシャッター速度。フラッシュを使ったらを濁りの真っ白な点だらけになってしまうと思いますし、厳しかったです。

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