天売島初上陸。初秋なのにアザラシがいました

北海道西部・日本海にある天売島は野生ゴマフアザラシの越冬地としてアザラシマニアの間では知られているかもしれない島です。ここのゴマフアザラシは晩 秋にやってきて春先に北に帰るのでアザラシシーズンは冬なのですが、近年では島に一年中居座るアザラシもいることが指摘されております。またアザラシ たちが魚を食ったり、網を破ったりするなど漁業被害も出ています。

一年中居座っているという情報から冬に行かなくてもアザラシが見られるかもという思いと、10月以降は島に行く船が一日一便になってしまい日帰りができ なくなるのでアザラシシーズン本格化の前に偵察をしたいという事情もあり、2006年9月23日に天売島に行ってきました。天売島はこれまでの野生アザラシ生息地探訪と違い、アザラ シによって被害を受けている漁師さんがいらっしゃるわけで、それなりに気を引き締めて厳粛な面持ちで天売島に向かいます。漁師さんにとっては害獣を見に来 る観光客なわけですから。

天売島は北海道本土の羽幌町のターミナルからフェリーが出ます。(天売島も行政的には羽幌町に属します。)この日の早朝に抜海港で野生のゴマフを見た後、 車で羽幌に移動、その後フェリーに乗ります。車は北海道に置いていき、車に積んできた折り畳み自転車を引っ張り出し、こいつで天売島内の移動をする予定で す。羽幌港発8時30分。焼尻島を経由し、天売島まで95分の航海です。運賃は2等で片道2230円。(私は学割で1700円ほどで乗りました。)


天売島・焼尻島へのフェリー「おろろん2」
500t前後の小さな船ですが車も積めます。
積載能力は8tトラック2台分だそうです。
この日の乗客は50人くらいかな?工事・仕事関係ぽい人が6割・地元の人が3割・残りが観光客風の客層です。

羽幌のフェリーターミナル。
平屋の小さなターミナルです。
天気は雨雲と快晴の部分が混在する不思議な天気。

本日のお供。
左がリュックサック(カメラ・財布・iPod・自転車のカギくらいしか入って無いです)。右は折り畳み自転車。
フェリーの右舷にて。

フェリーから見た二島。天売島の隣には焼尻島があります。この写真は左が天売島・右が焼尻島な気がしますが違うかもしれません(^^;

これは天売島(のはず…)。
フェリーは羽幌→焼尻島→天売島→焼尻島→羽幌
という順に航海します。

天売島のフェリーターミナル。羽幌よりさらに小さいです。
天売島の前に寄る焼尻島で9割のお客さんが降りてしまいました。天売島まで来た観光客は私のみ。早速上陸します。

フェリーが来ると港が活気付いていました。
この日は午前と午後の2便のフェリーが運航されます。
島の駐在さん(警察官というよりはこの表現がしっくり来ると思います。)も来ていました。自転車を組み立てて出発です。

港からの坂を上ると海の宇宙館があります。
港から1~2分の距離ですが急に急坂を走ったせいか既にバテ気味です。こちらで情報収集を兼ね休憩。

海の宇宙館の前に自転車を置き、入館料300円を払い入館します。天売島では漁業被害の出ているアザラシを見に来たという後ろめたさを感じつつ も「実はアザラシ を見に来たのですが…」と職員さんに話しかけてみます。「今では夏でもいるのでしょうか?どの辺で見られるのでしょうか?」といった内容を尋ねると、職員 さんは島の方々に電話をかけてアザラシ情報を集めてくださいました。漁業被害が出ているという意を聞いていたので害獣を見に来た観光客にはどんな仕打ちが 待っているかと 思っていたのですが、そんな観光客にも暖かい島でほっとします。職員さんが調べたり教えてくださった話を纏めると、現在島にいるアザラシは少ないが、見ら れるとしたら島南西部の赤岩灯台にある展望台の北側の岩礁だということ、展望台からその岩礁は遠いため、おそらく肉眼では観察できず、双眼鏡が必 要ということ、冬も赤岩展 望台付近の岩礁に集まっているということ、フェリー埠頭北部の岩礁にもいるときがあったこと、などを教えてくださいました。
海の宇宙館には島在住の写真家・寺沢孝毅さんの作品の展示やポストカード等の販売がありアザラシマニアにはたまらないものがたくさんありました。一回入館料を払えば当日は何回でも入館できるということなので、帰りにまた寄る事にして一回退館します。
「急坂が多いのでがんばってください」という笑顔に送られ島一周に出発です。海の宇宙館から島北部→西部→南部という一周ルートをたどります。天気も回復気味のようで雨雲はどっかにいってしまいました。島一周は約12km。


人家が切れるとこのような幅2mほどの道で島一周です。車はすれ違えないので多客期は一方通行になります。天売島は木が少なく雄大な景観が続きます。

激坂が続きます。フェリーターミナル→赤岩展望台方面は上り坂の連続。自転車を押して歩くこともしばしば。写真を撮りながらのんびり行くことにしま す。自転車のハンドルにぶら下がっているのはデジカメケース。後方に写っているのは焼尻島。天売島最高地点は184.5m。一周する道の最高点は170mほどです。


千鳥ヶ浦という景色の良いところ。後ろは焼尻島。島の北西岸にはこの千鳥ヶ浦のような断崖が続きます。名前で言うと観音岬・カブト岩・屏風岩です。近づけるところは断崖の上から双眼鏡で岩礁を見て転がっているアザラシを捜索しますが、まったくいませんでした。


そして海の宇宙館でアザラシ情報を頂いた赤岩に到着。ここは展望台やトイレが設置されています。写真左が赤岩灯台。


赤岩から北側の岩礁付近を望みます。おそらくこの岩礁が海の宇宙館で情報を頂いた岩礁でしょう。
双眼鏡で覗くと確かにアザラシがいました!この写真で言うと左側の岩礁に4頭。右側に1頭いるのですが、ここまで縮小すると何が何やらですね(^^;

デジカメの望遠を使わない (35mmフィルム換算で38mm)とこんな具合。まぁ肉眼での確認は無理です。
地球は丸いなーという気分になる写真が撮れます。

動画(1.23MB)

赤岩から岩礁に向かって左側の群れ。望遠をフルに使って(35mmフィルム換算で380mm)撮影→縮小した写真。
これでもアザラシ確認にはきついものがあります。
動画はアザラシが確認できるシロモノではないのですが周囲の雰囲気をお伝えしたいので置いておきます。

左記写真のアザラシ部分をトリミングしたもの。
何とか4頭いるのが確認できます。
普段は高倍率の双眼鏡を使わない私ですが、今回は20倍程度の双眼鏡が欲しくなりました。

違う写真です。
もっと良いデジカメがほしいなぁ。
基の撮影写真と同じサイズの画像(560KB・2048×1536ピクセル)も置いておきます。

続いては赤岩から向かって右側の岩礁にいたアザラシ。
こちらは単独で転がっています。
が、ここまで縮小するとわかりませんね。
基の撮影写真と同じサイズの画像(498KB・2048×1536ピクセル)をおいておきます。根性のある方は捜してみてください。

動画(1.84MB)

右上の写真のアザラシ部分をトリミング。
動画は双眼鏡の接眼部にデジカメを押し付けて撮ったもので、ブレがひどいですがアザラシが首を振っているのが写っていました。

赤岩灯台直下の海。とても綺麗な青い海でした。
海は南国が明るくて北の、しかも日本海側の海は暗いイメージがありますが、北の日本海もなかなかやるのです。

天売島はトッカりストではない普通の方にはアザラシの島ではなく海鳥の島として知られています。かつてはオロロンチョウ(ウミガラス)が有名でしたが今では絶滅の危機に瀕し ています。今はウトウが天売島の海鳥の目玉になっています。赤岩灯台の展望台もアザラシを見るための展望台ではなく、このウトウを眺めるために作られたもので す。せっかく天売島に来たのでその辺も紹介しましょう。


赤岩展望台の階段。そのすぐ脇にウトウの巣が無数にあります。写真の穴のような、くぼみのようなものがウトウの巣です。

繁殖期の3~7月になると日没後この巣穴にもどってきます。天売島には60万羽のウトウがいると言われます。
これだけの巣があれば圧巻でしょうね。

赤岩を離れ島南部に向かいます。
私が島で一番近代的な建物と感じた天売小中学校。小中学校あわせて19人の子供達が学んでいます。島の子供達は私のような見知らぬ人にもすれ違うと挨拶をしてきました。良い島だ。

国設天売島鳥獣保護区管理棟。
訪れたときは閉まっていたみたいです。
看板が旧環境庁(現・環境省)のままですが、無駄に金をかけない姿勢は好きです。ちなみに天売島一帯は「暑寒別天売焼尻国定公園」になっております。

天売島のメインストリート。役場の支所・郵便局・交番等があります。

海の宇宙館で頂いた情報にあった「フェリー埠頭北部の岩礁」確かにアザラシがいても良さげな雰囲気でした。

フェリー埠頭北部からはかすかに利尻島が見えました。
天売島から利尻島まで直線で60kmほど。

時間が余ったので自転車で散歩。再び天売島の激坂に挑戦。

動画(3.42MB)

こういった景色の中を自転車で走っていると心が洗われる気分です。アザラシに加えこの島の景色も印象に残っています。
動画は自転車に乗りながら撮ったモノです。

再び海の宇宙館に戻り職員さんにお礼と、遠かったもののアザラシが見ることができたことを報告。販売されているアザラシ関連のものを買ったり、展示してある写真を拝見したりします。こちらで以前から欲しかったあの本を購入できたことが嬉しい限りです。職員さんに尋ねたところ「天売島でインターネットで検索して一番最初に出てきたサイトを管理している」とのことなのでおそらくこちらが その海の宇宙館さんが管理されているサイトでしょう。天売島情報満載なので訪問の際はこちらで情報を収集することをお勧めします。ちなみにこちらのサイト によると寺沢孝毅さんが2006年11月に札幌紀伊国屋で写真展を開かれるとの事、札幌在住の管理人としては楽しみです。

さて島を離れるフェリーの出航時間も近づいてきたので港へ移動します。午後の北海道から来る便には数人の観光客風のお客さんがいました。それの折り返し便で北海道に戻ります。
フェリーの乗船券を買い、港のお土産屋に入り、店主の天売島在住ウン十年というお土 産屋のおばちゃんと話します。冒頭にも書いたとおり天売島ではアザラシの漁業被害が出ており、島でアザラシの話をしたら「そんなもの見に来るな」といった目で 見られるかもと思っていました。が、この天売島に根を下ろして暮らしているおばちゃんのお話は決してアザラシを否定的に見てはいませんでした。要約すると 以下のような内容。
「アザラシは漁業にとっては悪さをする時もある。でもそれは天売島周辺の海が豊かだからアザラシたちもたくさんいるからだ。逆に彼らが暮らせないような 海では魚もいなくなり、海鳥もいなくなり、鳥の観光も漁業もなくなり島の暮らしも成り立たなくなるだろう。彼らの存在は天売の海が豊かな証拠で もある。」
もっともなお話です。またアザラシ(とそれを見に来る私のようなモノ)がこの島で目の敵にされているわけではない事がわかりほっとしました。とはいえア ザラシによる漁業被害が出ているわけですから謙虚な気持ちで訪れたいものです。もちろん島民の方それぞれが、アザラシに対して異なる考え方を持っているで しょうし。

そのほかおばちゃんとアザラシや島の観光についてもお話をします。
アザラシに関して。やはり数が見られるのは冬の赤岩灯台付近。ただし冬は地元の人も赤岩方面には行かないため道は除雪されない、よって観光客が訪問することは かなりの困難だろうということ。春先にツアー?の人がアザラシを見に行くこともあるということ。かつては赤岩灯台には灯台守がいて、その人たちは冬場になるとスキーを履いて灯台まで行っていたということ。

島の観光について。やはりウトウの繁殖期は観光客が増えること。夏には天売島に接岸できないほどの大きな外国客船が沖に停泊し、観光客は小さな船に乗り 換え鳥を見に来ること。冬は船が出ないこともあるので観光客は少ないが魚が最高に美味しいということ。雪は案外少なく、海沿いゆえに気温もそれほど下がらいので結構 暮らしやすいこと。工事や仕事関係で渡ってきた人はクーラーボックス持参で魚を土産に持ち帰ること。そして10月以降はフェリーも減便し1日1便になって しまうのでもうすぐこのお土産屋は閉じるということ。知床等では観光客が増えているようだが、ここ(天売島)は今のまま(細い道や若干不便な交通機関)で 維持されて欲しいと思うこと。

そのほかおばちゃんの身上話などを聞いているうちにフェリーの出航が近づいてきました。「またおいで」という意の地元の言葉をかけられ急いで自転車を折り畳みフェリーに乗り込みます。島から北海道に行くお客さんは4、5人ほど。


フェリーターミナルに合ったゴマフアザラシの剥製。

天売島埠頭のフェリーおろろん2。
朝来た船と同じ船です。

天売港の防波堤先端にいた鳥。
羽を拡げて見送ってくれました。

天売島を出航。
小さくなる天売島を見てちょっとさびしくなります。

天気もすっかり回復しよい天気です。
写真は天売島。焼尻島かも。

焼尻島に寄って北海道へ。
焼尻港寄港の間、一瞬ですが焼尻島に上陸。
焼尻島も野生のアザラシを観察できます。焼尻島の訪問記録はこちら

フェリーの1等室。
新幹線の昔の普通車のような席が設置してありました。
この日の一等は乗客0人。

こちらが2等室。絨毯敷きの大部屋です。
私のような学割客はもちろん二等。もっとも乗船中はほとんどデッキに出ていたのでこの部屋にお世話になることはありませんでした。

今回天売島を初めて訪れたわけですが、感想は「素晴らしい」の一言に尽きます。風景も自然も良く印象が良いです。個人的にはアザラシ抜きでもお勧めできる島です。
観光では知 床よりお勧めです。(知床も素晴らしい所がありますが一般の観光で行けるところは…。世界自然遺産バブルで駐車場の入り 口で渋滞しているし。知床で渋滞ってあほらしくなります(^^;)

人の少ない島・雄大な風景・素晴らしく綺麗な海。旅行は日常と異質なものに触れるのが目的だというならば天売島は多くの人にとって一級の旅行の目的地となりうると思います。私と してはアザラシを抜きにしても再訪したい島です。もちろん冬~春先の越冬アザラシの見物手段を整えてくれたらアザラシファンとしてもありがたいです。

完全な外野からの意見で恐縮ですが、アザラシによる漁業被害が出ているとしても何とかアザラシと共存していって欲しいと思います。越冬アザラシを観光資源に使うのも良いのではと私は思います。天売島には蒸し暑い眼差しを注ぎ続けたいと思います。


2006年10月13日作成