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本棚と北杜夫さんの本

連休中、育った実家に久しぶりに帰省。特に何があるわけではないのですが、小学生~大学院生まで入手した本を片づけず私の部屋に適当に放っておいてくれているのはありがたいものです。広い家で暮らしている人が少なくなったからこそできるのでしょうが、一方で若干寂しい。
部屋の棚からは文庫本があふれていました。実に懐かしい本。働いてからは仕事に関係あるような本くらいしか読む時間がなく、頭が固くなったような気がします。大学時代くらいまでは全くいろいろな本を読んでいたような。本棚を見ればその人の中身や性格、嗜好が判るような気がしますが、↓の私の乳臭い本棚は中島らも、海音時潮五郎、宮脇俊三、沢木耕太郎、、、今ではなかなか読めないような知里幸恵の「アイヌ神謡集」やプラトンの「饗宴」なんかもあり、これらを覚えていれば私は相当な博学なはずですが、ほぼ忘れきっているのが無念・・・。
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部屋の照明は裸電球。紐を引っ張ると隣の暗い電球が付きます。
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引き戸の中も本。ここは20年来こつこつ集めた北杜夫コレクション。金が無い学生時代に集めたものなので、ほとんど文庫本ですが。昔と変わらぬ姿で小品から有名作品まで同列に並んでいます。私の本棚くらいは北氏の代表作も小品も同列に扱いたい。こういう紙の本はコレクター魂が疼きます。
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北杜夫氏の有名作三冊(幽霊・夜と霧の隅で・楡家の人びと)。昔の新潮文庫はこのように各作が共通デザインでシンプルな表紙でした。この古臭いデザインの表紙にわくわくした記憶が染み付いています。
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コレは「高みの見物」。ユーモア小説で、北さんの小説の中では比較的地味な扱いのものですが、私が北さんの作品で初めて読んだ本です。私が中学の頃、なぜか父がぼろぼろの古本をたくさん会社からもらってきたことがあり、その中に紛れていたのがこの本。職員の休憩所か食堂か何かそんなところにあった本でしょう。うちに来た当時の時点で既にぼろぼろで紙は茶色く変色し、古本特有の臭いを発していました。
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「高みの見物」は北さんの死後に刊行された「見知らぬ国へ」の中に自身による自分の作品への書評があり「高みの見物は気に入っておらず早く絶版にしたかった」という意が書かれていて複雑な気持ちになりました。確かに北さんの作品全体から見たら航海記などのどくとるマンボウシリーズとも違うし、もちろんまじめ系の楡家や幽霊などの作品とも違うし、さびしい王様やジバコやクプクプに比べてもインパクトが無い作品というのも非常によくわかる。。でもこれに出会わなければ私は本の面白さも分からなかっただろうし大げさに言えば違う人生になっていたような気がします。私にとっては大恩のある作品です。この作品は新聞に連載したものなので、なにより読みやすく、当時中学そこそこの私が面白いと思えた作品。わかりやすさというのも大事なものです。
さて、自分の部屋で北杜夫作品を眺めているうち思い出したことがあります。すっかり忘れていましたが、中学生の頃、北さんに手紙を書いてご本人から返信を頂いていたことがありました。そのハガキは机の引き出しに大切にしまっていたのですが、、、まだあるのだろうか。漁ってみるとありました!
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エッセイにも出てきた「いろいろに使える万能はがき」。当時の自分が何を書いて北氏に送ったかは、やはり覚えてませんが、クソガキが書くものですので、ロクなことが書いていないことは想像に難くありません。そんなどうしようもない子どものハガキにも丁寧に返信を下さった北さんに頭が下がります。
好きな本に囲まれていて、あまり時間に制約されず好きに読めた学生時代は、今思えばとても幸せな時間だったような気がします。何とかしてあの頃に戻りたいような戻りたくないような甘酸っぱい気持ちになります。

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